事件名
イラク国連事務所爆破事件

国 名

イラク
年月日 2003年2003年8月19日
詳 細

「これがソフトターゲットだ/攻撃しやすい標的を狙う/これは国連自身に対する攻撃である」

2003年8月19日、230キロの爆薬を積んだミキサー車の自爆攻撃により、バグダッドの国連事務所が爆破され、数時間後に犯行声明が出された。イラク復興の責任者セルジオ・デメロ事務総長特別代表を含む24名が死亡、100人以上が負傷し、国連を標的としたテロでは過去最悪のものとなった。この事件を境に、それまで米軍に限定されていたテロの標的が、他の国の軍隊、米軍に協力する機関や人々、更にはイラクの一般の人々にまで拡大・無差別化されてゆく。ソフトターゲット=攻撃しやすい標的が狙われるようになる。

ソフトターゲットへのシフトの理由は、ひとつには、武装した米軍を狙うより簡単に狙えるポイントを攻撃した方が効率がよいということがあるだろう。しかしそれ以上に、間接的に米軍の威信を失墜させるという効果を計算してのことだろう。つまり、米軍の占領下でのイラクには安全な場所がどこにも無い、すなわち米軍に治安回復能力が無いということの証明としてである。

また、それまでのテロは米軍を追い出すために行われていた。しかし、国連爆破テロは米軍をイラクに留まらせるために行われた。復興どころか日増しに治安が悪化してゆくイラクにおける米軍自らの損失を少なくするために、開戦前とは手のひらを返したように国連や他国の機関・軍隊の協力を仰ぎ始めたブッシュ政権にとって、国連は頼みの綱でもある。イラクで国連が活動できないとなれば、米軍の退路は断たれることになる。

中立が原則の国連でさえもが危険にさらされ撤退せざるを得ないような状況となったイラクに、いかなる他国の機関も、いかなるNGOも、いかなる投資家や企業も、進んで足を踏み入れようとはしないだろう。米軍は、国連の忠告と国際協調を無視して先制攻撃をしかけた責任として、イラクに留まり、今後も失敗した占領政策を続けてゆくしかない。収拾がつかないからといって、今さら放棄することも許されない。しかし、イラクの人々の怨恨を育てているのが他ならぬ米軍の占領である以上、テロも終わることはないだろう。

力で抑えれば、背中を刺されるだけである。武器は何の役にも立ちはしない。