事件名
パタ事件

国 名

フィリピン
年月日 1981年2月
詳 細

「モロ民族解放戦線(MNLF)」とはミンダナオ島・ホロ島に拠点をおき、その独立を求める反政府イスラム組織である。13世紀に伝来したイスラム教が、現フィリピンにおいてイスラム社会を形成した地がホロ島である。スペインが侵略し植民地化した16世紀以降、そのキリスト教化政策に反発し、ミンダナオ島・ホロ島のイスラム教徒は激烈な抵抗を続け300年もの間屈服しなかった。しかし、1898年、アメリカ・スペインの戦争でフィリピンはアメリカの占領下におかれることになり、イスラム教を無視したアメリカ側の政策に対し、フィリピンのイスラム社会は各地で反乱を起こす。これに対しアメリカは皆殺し作戦で臨んだ。1912〜13年にホロ島で展開されたブド=バクサクの乱でイスラム教徒の抵抗は力尽き、北部キリスト教徒と同一の支配体制に組み込まれることになった。1972年にマルコス独裁体制とイスラム地域への差別に対して、「モロ民族開放戦線(MNLF)」がホロ島で蜂起し、その後現在に至るまで各地で政府軍との戦闘を繰り広げている。


1981年2月12月、ホロ島沖のパタ島でモロ解放勢力掃討のために上陸した軍人119人を村民が銃撃・殺害した。村民も約40人が死亡した。これは、兵士がモスクで礼拝中のイスラム教徒の金銀の装身具を奪った事が原因であった。軍の報復は激烈で、空軍による爆撃が繰り返され、また数千人の軍人がパタ島に上陸し、死者は3000人に達した。
(浦野起央編著『20世紀世界紛争事典』三省堂(2000年)より抜粋)